地域ブランドの作り方は一つじゃない

フナハシドットコム代表 舟橋正浩

 日本各地に特産品といわれるものがあふれている。 似たような製品も多く、その差別化や特徴を生み出すことに躍起になっているところも少なくない。 そして残念ながら多くの事例が今のところ上手く行っているとは言い難い。 とはいえ、地域経済の起爆剤、地域活性化の起爆剤として期待されているため そう簡単に諦めるわけにもいかず、プロの手を借りるところも少なくない。 いわゆる広告代理店などだ。

 バブルの頃であれば、代理店側も結構お気楽に受注してパンフだ、 パッケージだ、メディアだと簡単に事を行なえた。当然結果は芳しくなく、 代理店側も信用を落す羽目になった。当然地域は投資をした割にはほとんど潤うことはなかった。 しかし、バブルが崩壊しても地域自立の財源として地域の特産品は期待されている。 いや、バブルが崩壊したからこそ、さらに増して期待されているといっても良い。 過去の失敗の流れの中で、地域はしっかり学習している。求められているのはオンリーワンであり、 オンリーワンを保証するブランドなのだ。それを特産品を生み出したい人々はとても理解している。 やはりそうなるとオンリーワンは探したり作り出せても、 ブランド構築は市場との相互作用である以上プロである広告代理店に頼らざるを得ない。 またその事は自然な流れであるし、それのことを非難する気はない。

 しかし、広告代理店の方も前回の失敗で学んでいる。 適当に受注しては自分の信用を落して、首を絞める可能性があるということを。 受けるからには、成功させなければならないのだ。その成功の裏付けが無いものは受注しない。 その裏付けとは何か。その特産品のバックストーリーに他ならない。 そして、田舎の特産品において最も人気があるのはその歴史的背景だ。

 実際に北限の松茸を使った焼酎を東京で色々な方に飲んで頂いた際、 やはりプロの広告業のかたは「いくら松茸でも北限だけでは弱い。例えば、 昔からアイヌのヒトに親しまれていたとか和人が入植の時に持ち込んだとか、 それにまつわる神話や伝説がないと難しい」と端的に指摘された。まさにその通りだと思う。 しかし、そんな都合の良い歴史的背景を持つバックストーリーなど、そうそうあるものではない。 代理店といえど勝てる勝負をしたいのだ。この商品のプロモーションはこの状態では多分、 誰も受けてはくれないだろう。 しかし、歴史的背景がなければバックストーリーは作れないのだろうか? 一つの面白い試みが今年、安城市で行なわれた。

 それは、安城織姫伝説という地域ブランドの構築である。 商品自体はまだ日本酒、焼酎、草履、弁当の4種類しかなく、 それ程面白いものではない。オンリーワンですらない。ベースにあるのは昨年50回を迎えた、 安城七夕祭りという地元で最も大きなイベントである。このイベント自体は、 人数はものすごく来る(およそ100万人)ものの歴史的背景は浅く、 これ自体をそのまま持ってきて七夕シールを貼りつけたところで、 力のある特産品にはなり得ない。

 せいぜいイベントの日だけ売れる一過性の土産物に過ぎない。 そこで行われたのが地元の人によるバックストーリー作りだ。映像の愛好家と地場の商店街、 市の職員等が中心となって、地域の人々で脚本、演出、出演をまとめて行なうローカルドラマを 作成したのだ。そこで脚本として用いられたのが七夕を軸にしたストーリー展開。 主人公の地元の踊り子さん(現代の織姫:ちなみに本職の芸子)と、 地元の蔵の若手職員(現代の彦星:市役所職員が出演)の恋愛ストーリーを作った。 その上で、そのストーリーと絡んでくる日本酒を軸に、 地場の蔵がドラマのタイトルを冠した日本酒を醸造。そしてそのドラマと製品のお披露目を 七夕祭りに向けて段階的に行なっていって販売を開始した。おまけに主題歌まで地場製。 イベントと映像と製品のミックス戦略なのだ。

 なぜこのようなスタンスでうって出たかといえば、 バックストーリーに関しては歴史がなければ作ってしまえという発想なのだ。 いわば、このドラマが安城の「七夕と織姫伝説の元年」であり、 地域に住む人達がこれから歴史を積み重ねていけば良いだけのことなのだ。 当然この試みに関しては、はじまったばかりなので事の成否は分からない。 しかしながら、二言目にプロの口から「それのバックボーンは?その歴史的背景は?」 と問われて悔しい思いをした方々も少なくないはず。 地域のブランドを生み出すのにはこういう手法もあるんだということを、 心に是非留めておいて欲しい。この手段であれば、 地域一丸となってローコストで地域ブランドを構築する可能性も十分にあるのだ。


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