フナハシドットコム代表 舟橋正浩
受託系のIT屋に関しては基本的な王道のビジネスモデルがある。こ れをどれだけ作れるかが、そのIT屋の収益構造を決めるし、私自身 もそういうモデルを構築することをお手伝いして商売をしている。 それは何かといえば、
☆企業IT化モデル
1.まずA社向けに一度システムを構築する。
2.同業他社、もしくは同様の問題がある業界にそのシステムを宣伝する。
3.A社向けのシステムをそのまま販売する。
というモデルだ。更に言えば、3のところの「そのまま」を「ほん の少し改良して」販売することで、基本料金+カスタマイズ料なん てのをもらうものだ。これは、原価をA社で回収して、後は利ざやに なるという、非常に美味しい話しなのだ。それを売りつけられたほ うにしてみても、開発期間が短くなるなど、メリットがある場合も 少なくないのだ。
当然、このモデルを敷延して、地方自治体やNPO向けのソリューションとして
☆自治体IT化モデル
1.B市(もしくは町、村)向けに一度システムを開発する。
2.B市以外の自治体に積極的に宣伝する。
3.B仕向けのシステムをそのまま販売する。
というモデルで、営業されているベンダーも少なくない。実はITシ ステムだけではなくて、自治体の政策やら、実施計画、NPOの業務手 法にいたるまで似たようなモデルで、IT屋だけではなくて、色々な 業界がうごめいている。
しかし、自治体においてこれはどれほど機能するのであろうか? 実際にこのモデルでうまく行かなかった事例を数多く聞く。企業に おいては機能するこのモデルが自治体に対して機能しない最大の理 由は、私は2にあると考えている。企業モデルにおいて、似たような 問題を抱えそうな同業他社向けを中心としているのに、自治体モデ ルにおいては、一律に全市町村が対象になっているからだ。 その大前提にあるのは、「地域は一律だ」というものだ。その前提 において、地域差というのは、些細なことでカスタマイズの範疇で 吸収できると考えているのだ。
しかし、そこまで地域というのは一律なのだろうか。
少しITから離れた話題をしよう。某A市において、とある地域活性化 手法の会議に出た時の話だ。当然、オブザーバーとして見学させて 頂いた手前もあるので、どの市かは伏せさせて頂く。 そこで議論されたのは子育てを通じて地域を活性化させる場所作り についてである。
地域の小学生を持つ親御さんの全数アンケートの集計結果を元に、
色々とどういう場所にして行くかということを、地域外のコンサル
タントと一緒に議論していた。そこで、コンサルタントが提案して
きたのは、地域のお年寄りと子供たちが交流するスペースだけでは
なく、その母親の育児相談にも乗るスペースを開設してはどうかと
いうものだった。
ぱっと、今思い出して書いてみても、全く違和感のない、普通に良
い提案に思える。しかし、その前提にあるのは
「地域は高齢化が進んでいる」
「子供の親は育児相談する相手がいない」
「子育ての情報は上の世代から下の世代に一方向で進む」
などがあるのだ。
実は、このA市において、この前提は非常に当てはまらないものなの だ。田舎にもかかわらず、地域の高齢化はぜんぜん進んでおらず、 全数アンケートでは恐るべき事に、育児相談の相手がいるかという 問いに対して、およそ9割もの人が「いる」と答えているのだ。しか もその理由は、多世帯住宅などによる、親から子への育児手法の伝 達ではなく、育児サークルが活発で「お母さん仲間」による育児情 報交換が活発だったのだ。全ての前提をばっさり切り落とされてし まうと、そんなスペースの提案は無駄でしかない。
子育てというテーマ一つ取っても、地域とはそれ程違うのだ。地域 の中身は多種多様なのはむしろ当然と言える。
このコラムを読んで頂いている方の多くは自分の地元で、数々の活 動をされていることだろう。一つ覚えておいて欲しいのは、「自分 の地域は他と違うんだ」という前提だ。他の事例を真似てもうまく 行かないのは当然。
床屋の成功するやり方と花火屋の儲ける手法は必ずしも一致しない のだ。ましてや、様々な人が多目的で集まっている自治体運営や地 域全体のソリューションが一致するなどと考えるのは、よっぽど無 責任といえる。
自分の地域の違いや特性を、外野の声やらマスコミに左右されない で、真摯に見つめて考えて欲しい。そうすれば自分の地域にとって 最も良い答えが見つかるはずだ。
参考サイト
フナハシドットコム
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