056.net NPO 代表 榊原正利
■実生活に役立つ地域ポータルサイトの構築
幣NPOでは、平成十一年より地域コミュニティーの為のIT活用を目指し、地域ポータルサイト0563.netの構築運営をスタートさせた。その目的は、地域情報化支援によるまちづくりである。地域住民に対する情報サービス支援を中心に、個人の地域情報の利用向上と市民活動団体の情報化支援のため、インターネット活用普及など社会活動に関する指導、助言、啓発、教育、相談事業をおこなっている。これらの活動を通じて地域ネットワークを形成することで地域の情報化による相互理解とパートナーシップを図り、地域コミュニティー全体の利益の増進に寄与することを目的としているNPOである。
■地域情報化やまちづくりは人づくり
まちづくりは優秀なコンサルタントが関わることで大きく前進する。しかしコンサルタントが離れてしまうと継続できなくなる事例も多く、これはコンサルタントが関わっている間に地域住民の中に事業を継続的に進めるエンジンとなる人が育つかどうかで決まるのである。地域情報化も同じで、システムを作っても主体的に情報を発信する人がいなければ地域情報化は進まない。まちづくりに必要なのは、課題とミッションをもち継続的に地域課題に対して主体性をもって取り組み情報を発信する市民の存在であり、またエンジンとなる人に必要なのは豊富な知識ではなく、プランニング能力、マネジメント能力、コーディネイト能力といった知恵である。そういったエンジンとなる人づくりこそがまちづくりに必要だと考えるのだ。そこで、幣NPOでは、市民活動インキュベータ事業を 2000年より展開している。事務局機能の提供や、HPの作成支援がその主な内容だが、これはそれぞれの組織が自立し、主体性や継続性をもつ活動を支援していくためである。
■2000、2001年 高校生によるまちづくりコンサートを支援
市民活動インキュベータ事業として平成12、13年と 2年に渡り地域高校生の企画・立案・実行による「まちづくりコンサート」を支援してきた。彼らは、「なぜ?私たち高校生はコンビニの前にしか居場所がないのか?なぜ、休日に近隣都市に出向かないと遊ぶところがないのか?」という課題をもち、「自分たちのまちを自分たちで楽しくしよう!」とコンサートに取り組んだ。結果として1年目には自主的に集まった4校の学生、約70名がスタッフとして中心市街地でのコンサートを実施し、2年目には8校、100名を超えるスタッフが、500人を動員するコンサートを実施した。
■イベント活動から市民活動へ
まちづくりコンサートに参加し、翌年大学生や社会人になった若者が、13年「井桁屋を考える会」を発足した。井桁屋とは、愛知県西尾市の中心市街地に残る大正末期の鉄筋コンクリート建築の百貨店跡だ。持ち主である吉見家が、保存を条件に旧井桁屋ビルを西尾市に寄付したいと申し出たものの、市の財政難から寄付を受け入れても維持が難しいとの理由で保存か取り壊しかが問題となっている状況であった。井桁屋は保存活動を行うのではなく、旧井桁屋ビルの清掃活動をすることでまちの中に自分達の居場所を作り出し、まちづくり活動の拠点を自分達の手で作り出そうとした。そして、強烈なメッセージを発信し始めたのである。
「この建物を保存するか否かは、将来この地域でくらしていくであろう私たちによって決められるべきものではないでしょうか。なぜなら、それにかかる管理維持費は私たち「将来の納税者」が背負っていくものであり、そのころにはいない先輩方の都合で残されても迷惑なものと言いたいのです。」
その活動内容は清掃活動に始まり、建物を利用してのコンサート活動、地域の大正・明治の写真展示会などの開催となり、発足後一年たらずの14年2月までの間に旧井桁屋ビルには5161人もの来場者を動員した。「井桁屋を考える会」の活動が最高潮になった13年夏にはさらに旧井桁屋の持ち主である吉見家の、吉見家旧宅について、その年のまちづくりコンサートを実施した高校生が主体となり、「吉見家を活用する会」も発足した。こうした地域の若者の活動をうけ、吉見家は旧井桁屋について保存を条件としない(取り壊しを含めた決定権は市が保有する)寄付を再度西尾市に申し入れ、市側は翌年寄付を受け付けた。また、旧吉見家、旧井桁屋が寄付されたことが発端となり市商工会議所内にTMOが発足したのである。地域の若者がおこしたまちづくり活動「井桁屋を考える会」「吉見家を活用する会」は結果として吉見家の寄付の内容を変え、地域にTMOを発足させるほどの現象を引き起こした。しかしこれは結果でしかなく、この活動の本当の意義は、地域の若者がプランニング、マネージメント、コーディネイトをまちづくり活動を通して自ら実践し、多くの仲間と考え、学び、喜びや達成感を分かち合ったことだ。
■NPOはコミュニティービジネスの苗床
市民がイベントや市民活動を行うにあたって事務局機能、情報発信は不可欠なものである。そのサポートさえできればユニークな活動が展開することは可能である。さらに、地域課題に対して継続的に取り組むには財源という大きな問題がある。その財源を自ら作り出す収益活動こそがコミュニティービジネスやマイクロビジネスをつくりだす苗床になると考えている。
■市民活動からエコ・コミュニティー研究会へ
市民活動インキュベータ事業の支援を受け、イベント活動や市民活動など様々な体験を通して知恵を身につけたメンバーにより、地域の様々な課題を遠隔地との連携の中で解決するという取り組みの中で、収益活動やコミュニティービジネスの可能性を研究し実施することを目的としたエコ・コミュニティー研究会が発足した。市民活動インキュベータ事業として、コミュニティービジネスの可能性の実証実験を進める研究会をたちあげた彼らを継続的にサポートしていきたい。
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